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バックナンバー(第26巻)

農家を守るGAPとは?


SANASAN






真 智代 【フィールド科学教育研究センター(住吉)・教務補佐員】


 みなさん、農業に関係する「GAP」という言葉を知っていますか?6年半前の私は、知りませんでした。
 GAPとは、Good Agricultural Practiceの頭文字をとったもので、農業生産活動の各工程に潜んでいるさまざまな危険性について、把握し、危険性を減らす取り組みを実施することで、農林水産省では、「農業生産工程管理」と訳しています。
 では、このGAPがなぜ「農家を守る」のか。例を挙げましょう。

 GAPの取り組みには、自分が出荷した野菜がどの畑で収穫したものか、その畑でどのような管理(農薬や肥料)をしたのかを記録することも含まれます。正しい記録があれば、万が一、自分の所属する産地で残留農薬違反が出た場合でも、自身の農薬散布の方法に間違いが無かったことを説明できます。これにより、出荷停止を免れる可能性がでてきます。記録が無いと、正当性を説明できず、出荷停止に陥ることもあるかもしれません。
 農作業における安全性の向上も期待できます。どれだけ食の安全性を向上しても、作業をしている人がケガをしたり、亡くなったりしては意味がありません。農業の分野では、就農人口が減っているにもかかわらず、30年以上、年間400人もの死亡事故が起こっています。原因は、トラクタのような乗用農業機械による事故が最も多いですが、体重700Kgほどになる牛と壁に挟まれるような事故もあります。GAPに取り組み、それぞれの作業における労働事故の危険性を認識して、それらを低減することで、死亡事故はもちろん、農業ができなくなるような大ケガを防げる可能性が高まります。これら以外にも農家を守る取り組みがGAPにはたくさん含まれています。
 また、このような取り組みを第三者が確認し、認証する仕組みもあります。我が国で普及している認証性GAPは、JGAPおよびGLOBALG.A.P.の2つです。宮崎大学農学部附属木花フィールド(農場)と附属住吉フィールド(牧場)は、それぞれ青果物と穀物を対象としたJGAP認証(写真1)と牛とミルクを対象としたGLOBALG.A.P.認証(写真2)を取得しています。そのため、農場および牧場での実習は、それぞれのGAPルールに則した内容となっていて、実習受講生は、実践的にGAPを学ぶことができます。さらに植物生産環境科学科では、GAPを体系的に学ぶことができるGAP教育プログラムを実施していて、毎年、30名前後の修了生を社会へ送り出しています。


 
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写真1 JGAP認証書と木花フィールド教職員
写真2 GLOBALG.A.P.認証書と住吉フィールド教職員

 さて、このGAPですが、2020年東京オリンピック・パラリンピックの食材調達基準に選定されたことから、全国的に普及が進んでいます。宮崎県も同様で、現在、私は、宮崎大学と宮崎県との連携協定の中で、農産および畜産の県職員やJA職員を対象とした一連の「GAP指導員養成研修」の講師を務めさせていただいています。私が一人で1,000軒の農家をサポートすることはできませんが、私が携わった100名の指導員がそれぞれ10軒の農家をサポートすれば、1,000軒の農家がGAPに取り組めます。6年半前にGAPを知らなかった私が、今は、全国に、まずは宮崎県に「農家を守るGAP」が普及することを目標に毎日を過ごしています。


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写真3 色つきのロープを付けて、しっかりと分けて搾ることにより病気の牛のミルクが健康なミルクと混ざることを防ぐ
写真4 農場のGAPルールに則って栽培されたトマト






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