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バックナンバー(第37巻)

「宮崎県のサンゴの魅力」


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 深見 裕伸 (海洋生物環境学科・准教授)



「サンゴ」という言葉を聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?海でよく潜る人は沖縄の海やサンゴ礁を思い浮かべるでしょう。また、ピンクや赤などの宝石のサンゴを思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、この宝石のサンゴと、サンゴ礁でみられるサンゴは同じではありません。宝石サンゴは深海数百mといった深い海にいるため、通常海中で実際目にすることがありません。一方、サンゴ礁にいるサンゴはイシサンゴ類というグループの中で、さらに体内に共生する藻類を持っているグループのこと(一般的には造礁性イシサンゴもしくは造礁サンゴとよびます)で、宝石サンゴとは別ものです。よく、サンゴの研究をしているというと、宝石サンゴと間違えられることが多いですが、私が研究をしているのは、サンゴ礁にいるほうのサンゴです。ちなみに、宝石サンゴも造礁サンゴもクラゲやイソギンチャクの仲間です。

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沖縄のサンゴ礁

造礁サンゴについてですが、やはり日本では沖縄のイメージが非常に強いですね。サンゴ礁といえば沖縄というのは多くの人が感じていることだと思います。しかし、実は、千葉~鹿児島までの太平洋沿岸、もしくは対馬海流の流れる九州西岸にも多くの造礁サンゴが生息しています。この宮崎にも100種以上の造礁サンゴが生息しています。ただし、「サンゴ礁」というのは、造礁サンゴが長い年月をかけて成長し、防波堤構造を持つようになった地形を指す専門用語であり、その北限は種子島となっています(例外的に、長崎県の壱岐にもあります)。そのため、種子島より北の九州、四国、本州などでみられるサンゴの群集地域については、サンゴ礁という言葉はつかえません。なかなか良い言葉はないのですが、我々は「サンゴ群集」と呼んでいます。

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延岡市のサンゴ群集

さて、私達の研究室では、この造礁サンゴの分類、系統、生殖の研究に主に取り組んでいます。その一方で、宮崎周辺海域のサンゴ群集の保全活動にも参加しています。まずは、なぜ造礁サンゴの分類について研究しているのかについて少しお話しましょう。学生当時、私はサンゴの生殖関連の研究を行っていました。しかし、いざ海から自分が研究で使いたい種類を見つけようと思ったときに、それがどれか全くわからなかったのです。しかも、様々な本や論文を読んで勉強してもいっこうにわかりません。周りの研究者に聞いたところ、実は誰もはっきりとわかっている人がいないという驚愕の事実もわかりました。これはいったいどういうことなんだということで、なら自分でやってみるかと思い始めたのがきっかけです。当初は、とりあえず自分の使いたい種だけでもわかればいいかと思い始めたのですが、研究し始めてみるとほとんどの種の定義が曖昧でやればやるほど分からないということがわかり、やめるにやめれなくなって未だ続けています。泥沼にはまり込んだ心境です。ただ、それでも少しずつですが、分かってきたこともあります。最近、特に力をいれているのが、九州から本州にかけてのサンゴ群集に生息している造礁サンゴの分類です。実は、この地域、世界中の造礁サンゴの北限の生息地となっている貴重な地域なのです。もともと、この地域の造礁サンゴというのは、沖縄方面から黒潮に乗って幼生が流れてきてそれが定着しているため、独自性はあまりないというのが通説でした。しかし、研究を進めていくうちに、実は、この日本のサンゴ群集の多くの種は日本の固有種の可能性が高いという結果が出てきています。やはり自分が住んでいる場所に貴重な種がいるというのはうれしく、現在、それらを明らかにしていくのを楽しみにしながら研究を続けています。

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日本の固有種候補のサンゴ

他にも系統や生殖の研究もしていますが、それはまたいつかどこかでお話しするとして、最後に宮崎のサンゴについてお話したいと思います。宮崎に住んでいて身近に造礁サンゴがあるということを知らない人が多いのですが、実は、宮崎北部の延岡市周辺と南部の日南市や串間市には大きなサンゴ群集が見られます。特に、延岡市の島浦島や日南市の宮崎大島はダイビングスポットになっており、県外からの多くの観光客がダイビングをして感動して帰っていく場所です。

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宮崎県日南・串間市のテーブルサンゴ群集 宮崎県延岡市島浦島のテーブルサンゴ群集

残念なのは、船に乗らないとサンゴが多い場所まで行くことができないため、簡単に浜から泳いでみるということができず、ダイビングをしない人達にはなじみが薄いことです。私達の研究室では、まず宮崎にどれくらいの造礁サンゴが生息しているのかについて調べています。特に、現在、延岡市周辺のサンゴの図鑑をダイビングショップの人達と一緒に作成中です。図鑑がなぜ必要かというと、人間、名前が分からないものには興味を持てないということがあります。図鑑は写真を見てある程度名前をつけることができるため、自分の目で見た生き物が何であるかを知るうえで非常に有効です。サンゴは魚のように移動しないため、あまり観察対象として興味を持たれませんが、逆に言えば、動かないのでじっくりと見れるとも言えます。宮崎の豊かな海のサンゴを、ぜひ一度見てください。その一方で、数年前からサンゴを食べるオニヒトデや貝の被害が宮崎南部で広がっています。県や日南市・串間市、さらには漁協やダイビング業者と連携して駆除活動を行っているところです。ただし、海は広く、なかなか思うようには行きませんが、この地道な活動を通して宮崎の海の大切さを知ってもらえると嬉しく思います。





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