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のうがく図鑑



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バックナンバー(第40巻)

農学のなかに経済学?


YAMAMOTOT








 山本 直之 (植物生産環境科学科・教授)



 皆さんはこれまで、この「のうがく図鑑」を読んで、農学がいかにさまざまな自然科学(生物学、化学、物理学などの理科や獣医学)から成り立っているかがわかったことでしょう。しかし、農学はこうした自然科学の分野ばかりではなく、実は経済学や経営学、社会学といった社会科学の分野とも密接に関連しています。
 たとえば、よく「野菜の価格が高騰した(または暴落した)」というニュースを耳にすると思います。また、「日本がTPP(環太平洋経済連携協定)に署名した」とか、「特に山間部では高齢化が進み農業従事者が減少している」ということをご存知の皆さんもいることでしょう。
 では、野菜の価格の変化はなぜ起きるのでしょうか? TPPへの参加や従事者の減少が、実際の農業生産現場にどのような影響を与えるのでしょうか? また、農家(生産者)の方々が安定的に農業を続け、農村地域が活性化するためにはどのようなことが必要なのでしょうか? 次から次へと疑問が湧いてきますね。こうした疑問に答えようとするのが、私の専門である「農業経済学」なのです。そして、私の所属する植物生産環境科学科では、実験・実習だけではなく、経済学まで幅広く学ぶことができます。
 この「農業経済学」の面白さって何でしょうか? 第1に、農業に関わる多くの方々と常に接し、学べることです。一般に農業は厳しいと言われていますが、そのようななか、新しい農業技術やITを取り入れて先進的に頑張っている生産者の方はたくさんおられます(写真1)。そして、そこでは単に「研究室」にいるだけではわからない、さまざまな創意工夫があります。まさに「百聞は一見にしかず」ですね。
 第2に、農業の「現場」から収集したさまざまな情報やデータを客観的に分析することにより、農業経営の発展や地域活性化のためのヒントをつかむことができます。こうした分析が経営の計画や政策を立案するうえでの参考になるときは、まさに私たちの喜びです。
 第3に、農業生産者だけではなく、消費者の立場からも分析することが可能なことです(写真2)。いま消費者は食料品にどのようなニーズがあり、農産物をどのように流通させるべきなのか。消費者の生の声を把握し、生産者との交流へつなげていくことも重要です。

 
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 写真1) イチゴ生産者への聴き取り調査  写真2) 消費者へのアンケート調査


 一方、「農業経済学」の大変さもあります。農学は総合科学だと言われますが、それを基盤とする「農業経済学」である以上、農作物の栽培や家畜の飼育、農業機械の仕組みなど、関連することは一通り知っておく必要があります。特に、新しい技術の経済性を検討する場合には当然です。また、正解が1つとは限りません。地域条件、社会経済条件などによって常に「答」が変化するからです。ただし、最先端の技術がどのような条件でどのように普及していくのかを、自然科学分野の研究者や現場の関係者の皆さんと一緒に考えていくことは大きな楽しみと言えます。
 なお、私たちの研究室では、学生の皆さんと共にさまざまな調査などを行っています(写真1~4)。こうした調査は、自然科学の分野で言えば実験にあたりますが、「実験」を繰り返して真理を常に探求していく、この基本的な姿勢は自然科学も社会科学も同じです。農学のなかにある経済学。それはまさに「現場」から学ぶ学問であると言えるのではないでしょうか? 皆さんも、今日どのようなニュースがあったか、まずそこから興味を持って頂けると嬉しいです。

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 写真3) 宮崎市中央卸売市場の競り  写真4) 宮崎市田野町の皆さんとの共同作業




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