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バックナンバー(第42巻)

「地域を好きになる食品の研究」


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山崎 正夫 (応用生物科学科・教授)



 今回このコラムを担当する山崎は、宮崎大学に赴任するまでは宮崎県には縁もゆかりもない人生を送ってきました。宮崎に赴任するまで山崎はずっと油の研究をしていまして、油の摂取と健康の関係を調べてきました。この研究は、大学の卒業論文のテーマとして与えられたもので、自分の成果をどんどん世の中に発信できる楽しさに魅せられ、10年近く夢中に研究を進めてきました。14年前、ふと宮崎大学に来て最初に考えたことは『ここで自分は何ができるだろう?』ということでした。そこで、大学の研究者として自分は何を目指したかったのかという根本的な『思い』に立ち返ることにしました。
 私は島根県の出身で、郷土の食べものに対する思い入れが強くありました。そして、歴史的な背景、文化との関わり、美味しさの秘密など興味はつきませんが、『郷土に根付く食べ物と私たちの健康の関係』を知ることに大きな魅力を感じていました。やるべきことは、これだ。時同じくして、大学では『地域貢献』を意識する時代になってきました。
 宮崎出身者ではない自分にとっては、宮崎を知るところからスタートをしました。マンゴー、牛肉などすでに超がつくほど全国区の食材はすでにたくさん世に出回っていました。もう少し目立たない存在はないだろうか?果たして、宮崎県は日本有数のダイコン産地であり、冬場の切り干しダイコンを干す光景はもはや宮崎の風物詩となっていることを知ります。さらに調査をしてみると、全国的に一般的な品種である青首ダイコンだけでなく、県内にはそれ以外にも西米良地方で小規模に栽培されてきた糸巻きダイコンと呼ばれる有色のダイコンに行き当たりました。いわゆる『伝統野菜』と呼ばれる宮崎ならではの品種でした。まさに日陰の存在で、宮崎県民でも知っている人はそう多くないようでした。
 このダイコンの研究を始めると、宮崎県内では伝統野菜を大切に育てる農家さんや、形や色の不揃いな糸巻きダイコンの性質を安定させようとする県の研究者とも出会うことができました。私たちも、このダイコンが健康機能性の高い成分としてアントシアニンという色素と辛味成分を同時に持っていることを明らかにしました。廃れつつある、その土地ならではの食材にはまだまだ、隠されたパワーがあると思います。美味しくその土地ならではの調理法や食材にまつわるストーリーとともに健康的な食材を提案できれば、これぞ地域貢献になるのではないかと思います。



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糸巻きダイコン栽培の様子

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細胞培養試験の一例:脂肪細胞(体の脂肪を構成する細胞)のモデル細胞を培養している様子。赤い部分は脂肪。脂肪減らす食品の探索に使います。

赤と白の糸巻きダイコンの酢漬け。糸巻きダイコンの赤い色はアントシアニンによるもので、酸性(酢漬け)にすると綺麗なピンク色になります。おめでたい感じが演出できますね。

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どちらも糸巻きダイコンですが、全く色が違います。形質(色や形)が安定していないことも伝統野菜の特色と言えます




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